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老舗家具メーカーとデザイナー達が挑む、新たな価値創造のスキームとプロセスを、それぞれの椅子の背中ごしに覗いてみてください。メーカーや職人とデザイナーとの距離、そしてデザイナーとモノとの距離を感じていただければと思います。
「日本文化との対話」プロジェクト、その意義
1. 多様性の社会
20世紀、我々は世界の均一化へむけて突っ走ってきました。当然、そこには異なるものを否定する思想がまん延することになります。今日まで異なる歴史と異なる民族、異なる宗教の間で、支配・被支配の争いが絶えたことがありません。その歴史が我々に突きつける事実は、均一化への志向が、皮肉にもさらなる争いを呼ぶということでした。それは決して人類の発展、成長には貢献しないのです。
動物の集団の中から異質なものを排除しても、残された均一な集団から再び異質なものが生ずるといいます。自然は本質的に異質なものを含み、多様性を持ち続けることで健全さを維持してきたのです。すなわち、多様性とは、種の成長と革新を保証する巧妙な仕掛けとして、始めからこの世界に仕組まれたものなのだと思います。
21世紀は、多様性を受容することを学び直し、多様なままに共存するための新たな枠組みを発見する世紀となるでしょう。多様な個性や多様な文化が共存する複雑な組織として、我々の社会がダイナミックな秩序を維持する時代を創造していく工夫こそが今重要なのです。
2. 多様性とは
多様性をもつダイナミックな社会とは、異なる様々なものが単に混在することではありません。それは、異なる他者同士が互いに刺激を受け、創造的に関わりあってそれぞれが自己を成長させる関係の総体として立ち現れてくるものです。真の創造とは、一人ひとりが他の異なる個性から刺激を受けて、生起され醸成され続ける自己の有りようを世界に向けて告白することなのです。創造活動とは、他者との間に相互生起的に生み出される交流に他ならないのです。
創作活動は単に相互的であるだけではありません。例えば、芸術作品が伝える思想やイメージはその作家が意図したようには伝わらない。メッセージを受け取る他者は、それを不可避的に自分の思想や経験を介してのみ読み取ることができるのです。それゆえに、作家のメッセージは読み取る人によって新たに創造されることになります。作家の創作活動というものを広い視野からその本質で捉えるならば、読者は作家の創造活動に明らかに参画していると言えるのです。
多様な社会とは、こうして異なる人や異なる文化を持つ人や民族によって複層的に創造され続けていく社会のことです。このメカニズムは、芸術においてだけではなく、人間の日常的な営みや行動、主張などにおいても全く同様に作用しているのです。社会の多様性とは、単に異質なものが混在した静的な集合ではなく、相互に反応し、影響しあう創造の連鎖そのものです。それは動的であり、調和を保ちつつも常に新たな秩序へと移行する契機を孕んだ、高度に融合した状態をいうのです。
3. 日本文化との対話
このような異なる文化との創作連鎖の実験を、小椅子のデザインに託そうというのが、ネキストマルニプロジェクトの「日本文化との対話」です。「日本の美意識へのメッセージ」を椅子によって表現することをお願いし、それを一ヶ所に集めて日本文化との対話の空間を出現させようという企てです。
世界のグローバル化が進むにつれて、地域や民族や宗教を異にする多様な個性が、世界的規模での共存の方法を模索し始めています。その世界の動きを、我々がより明確に意識し、より逞しい動きへと誘うための実験的試みとして、このプロジェクトは計画されています。これは、多様性への志向という遠大なビジョンを実現していくための、デザインによる一つの実験に他ならなりません。ルーツを異にする多様な個性が、日本の美意識へのメッセージとしてそれぞれの椅子を描き出すという創造行為を世界は目撃することになるのです。その時、世界は、理念が現実へと導かれる瞬間を目の当たりにすることになるはずです。
このプロジェクトは決して世界のデザイナーに日本の美意識を受け入れ共有してもらうことを意図してはいません。それぞれのデザイナーの文化的他者としての多彩な個性と日本の美意識との遭遇から何が生起してくるのかはわかりません。そのまだ誰も知らない真新しい想念を、椅子の形として表現してもらうこと、それが「日本の文化との対話」なのです。


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